HACCP義務化とは

「HACCP」(「ハサップ」と読みます)とは、食中毒を予防するために、2020年に全ての食品事業者に「HACCPに沿った衛生管理」を義務付ける形で食品衛生法により、制度として位置づけられました。
この「HACCP」は、原材料や製造作業から食品に混入してしまう可能性のある「食中毒原因」をあらかじめ「分析」し、これを予防するための「重要な管理点」を科学的根拠に基づいて明確に定めて管理するものです。

調理作業の「見える化」

このように説明すると難しく感じますが、大事なことは過去に起きた食中毒事故や食中毒の研究を活用して、「食中毒予防のコツ」をしっかりと決めて管理しましょうということです。
今までの衛生管理との違いは、「モノ(製品や施設)中心の管理」から、「作業(加熱や冷却)中心の管理」に変わる点にあります。
「作業」を管理するために、「衛生管理計画」を作成して、「どんな作業をするのか」「問題があったときにどうするのか」を文字で、働いている人に分かりやすく伝えて、ルール通りにできたかどうかを記録することにしたのです。
したがって、今までより厳しく衛生管理をしなければ行けないわけではなく、今までやってきた調理作業を「見える化」して、「記録」しましょうということだけなのです。

食品安全文化>HACCP義務化

では、なぜ今までと作業を変えずに、作業を「見える化」して、「記録」するだけで、食中毒を予防することができるのでしょうか。
それは、「HACCP」導入の本当の目的は「食品安全文化」の構築にあるからです。
「食品安全文化」とは、「食の安全」を第一に考える「社風」のようなものです。分かりやすく言うと「怒られるから、手を洗う、掃除をする」のではなく、「プロとして必要だから、自然と手を洗い、掃除をする習慣を作っていく」イメージです。
この「社風」や「習慣化」のためには、過去の長年の研究から、一部の人だけで頑張るのではなく、「リーダーシップ」と社員全員への「情報共有と教育」が重要なことが分かっています。

記録は「ウ◯チ」みたいなもの

長年、HACCPの研究をされている大学教授の方が、「記録は『ウ◯チ』みたいなものです」とお話されていました。びっくりして、その真意をお尋ねしたところ、「ちゃんとやっていれば、良い記録が出てくる。正しい食生活をしていれば、良いウ◯チが出てくるのと一緒」と教えて下さいました。
記録はウソをつきません。長年、HACCPの指導をしていると、ウソの記録かどうかは、一目見れば分かります。ウソの記録があるということは、「食品安全文化」が十分に根付いていない、悪い製造活動を社員にやらせていることになります。
「リーダーシップ」は衛生管理計画に、「社風」や「習慣化」は記録に現れます。皆さんの「食品安全文化」の定着状況はどうですか?「良いウ◯チ」はちゃんと出ているでしょうか?
HACCPの義務化に対応することよりも大事なことは、食品安全文化が根付くことです。その一つの目安として、日々の記録(「良いウ◯チ」)が出てくるかどうかを確認してみてください。