生まれは大阪、育ちは福島。
 東京でサラリーマンをやっていたオーナーが、旅行に来た際に温かい人柄と風土に触れ惚れ込んでしまった沖縄で「東日本大震災の影響で風評被害にあっていた地元福島県の旨いものを応援したい」という思いで、県外の美味しいもの・日本酒・焼酎メインのお店をスタートした。「地元密着型の居酒屋」さんを目指す「とりからたまご」さんの取組みを紹介する。

お客様への思い

【写真】地元のお客様への思いを語る福本オーナー。柔らかい物腰が印象的

「ゆくゆくは、(親に連れて来られている)小学生が成人して飲みに来たり…というのも面白いな」

 今では近くの小学校のPTAの集まりにも使ってもらえるようなお店になった「とりからたまご」は、元々食べるのも飲むのもしゃべるのも好きだった福本オーナーが、本土の美味しいものと生まれ育った福島の日本酒の美味しさを沖縄の方に知ってもらうためにオープンした。
 7年連続最多金賞受賞中であり、まさに日本酒のメッカである福島の地酒。しかし現実には新潟・秋田・山形に比べると福島の地酒は沖縄では知名度が低く、福島の地酒を飲めるお店は限られていた。そこで福島の地酒を前面に押し出したメニューと季節のお酒が飲める「日本酒の飲み放題」をお店に取り入れることにした。
 当時は「泡盛の飲み放題」が一般的に受け入れられている一方で、「日本酒」を出しているお店は少なく、「日本酒の飲み放題」をやっているお店は全く無かった。「(泡盛の飲み放題なら分かるけど)「日本酒って言われると、どうなんだろう。受けいれてもらえるだろうか」と不安にかられながらスタートしたが、フタを開けてみると、「日本酒の飲み放題」は泡盛に負けずに受け入れてもらえた。
 有り余る飲食店で、「近い・交通の便がいい」など、日本酒以外にも様々な理由があるかと思うが、地元の人に選んで頂けていることに喜びを感じる。
 

今までお店を続けてこられた理由

 泊というエリアをお店を構える場所に選んだ理由は那覇の中心から程よい距離ということもあるが、一番の理由は泊というエリアが昔からある場所で地元の方も多く住んでいるため、福島の日本酒や県外の食事を沖縄の方に味わってもらうには一番適した場所と考えたからです。そういった地元の方に支えて頂いているおかげで、このコロナ渦でインバウンド客や観光客向けの利益率の高いお店が軒並み落ち込んでいく中でもなんとか踏ん張れています。
 さらに、県外では、何とか踏ん張って営業を続けている居酒屋に対して、さまざまな嫌がらせをする自粛警察の話をよく聞いた。
 ここ沖縄では、土地柄人柄もあると思うが、「沖縄の人に、県外のおいしいものを食べて、美味しいお酒をのんでほしい」という福本オーナーの思いが「応援されている」という実感・声掛けがある。コロナの影響下だからこそ、地元のお客様に支えられているのを実感でき、本当に「この場所でやっててよかった」と感じていることを話してくれた。

【写真】地元のお客様に思う存分楽しんでもらえるように、店内には所狭しと日本酒がならぶ。

コロナ対策後のお店について

 

【写真】席に着く前に、アルコール消毒と検温をしてもらう。席についてからもスタッフがおしぼりを渡しながら、再度消毒するほどの徹底ぶりだ。

 せっかく来ていただいたお客様を守るためにも、また、従業員を守るためにもコロナ対策を行うようになった。具体的には、来店いただいたお客様の一人ひとりを検温し、席についたらおしぼりを渡しながら従業員がアルコール消毒を行う。
 安心して食事を楽しんでもらえるようにしっかりとした対策をすることがお客様の負担にならないか心配したが、対策の前後で客数が増減するような大きな変化はない。
 「(不十分な対策で)クラスターが起きたときが本当に怖いと考え、できるかぎりの対策は行っているが、何も起きないという確証はない。常にリスクと隣り合わせ。」と福本オーナーは緊張感をあらわにする。
 6月ぐらいは、「やっとお店が開いた!」という感じで常連さんたちが戻ってきてくれたが、8月は緊急事態宣言もあったため、客数は明らかに減った。
 土日は家族連れが多かったが、今はほとんど見かけなくなってしまった。

テイクアウト・物販に期待すること

【写真】テイクアウトメニューにも県外の魅力的なメニューが並ぶ。

「元々テイクアウト自体はやっていた。しかし、思うように売れなかった。おまけのようなものだった。このコロナを機に、本腰を入れようと考えています。」と福本オーナーは話してくれた。
 テイクアウトや物販で準備しなければならない「食品表示」や、制度化され「HACCP」についても、「全て本気で本腰を入れて取り組む人が先に進めるのだ」と感じている。そして、「(製造業をやっている)知り合いの先輩に質問したところ、『なめるなよ、ちゃんと取り組むこと』と言ってもらった。
(お客様を)飽きさせないように、日替わりのメニューを置いている。他のメニューもちょこちょこ変えたり。」
「(メニュー改善とテイクアウトに取り組んでみて)面白かったのが、店内の人気順位と、テイクアウトのメニューの売れ行きが違う。何がテイクアウトで(お客様に)刺さるのか、楽しみながら作っている。」



 最後に「このコロナ禍をポジティブに考えている。勉強させてもらっていると感じる。ここでしっかり準備・対策出来た人が、今後うまくいくと感じる。」と笑顔で話してくれた。

 取材にお伺いした際には、福本オーナーは電話中。食品表示のラベルなどについて、業者さんと打ち合わせをしていた模様。
 オーナーの地元福島へ対する思いと、店舗を構える泊周辺・地元客への感謝があふれる取材となった。
『応援します!お店の良さ・美味しいものをどんどんアピールさせてください』とお話させて頂いた。 元気づけるつもりで取材に臨んだ大城だったが、福本オーナーの、苦しい状況なのに前を見てどんどん進んでいこうとする姿勢に、こちらもしゃきっとさせられる取材となった。